収録アルバム "Intuition"(邦題:インテュイション)
今回は、北欧メタルを代表するノルウェー出身のバンド、TNTが1989年にリリースした4枚目のアルバム、"Intuition"(邦題:インテュイション)から "Tonight I'm Falling"(邦題:トゥナイト・アイム・フォーリング)をご紹介します。
TNTは、1983年にノルウェーでボーカルのダグ・インゲブリクトセンが中心となって結成されました。同年、アルバム "TNT" でデビューすると、同じくデビュー・アルバムをリリースしたばかりのヨーロッパとともに北欧メタルの旗手として注目されることとなりました。
デビュー・アルバムの "TNT" はダークな雰囲気を持つ素朴なパワー・ロックで、全編ノルウェー語で歌われており、それもあってか全米などではあまり評価はされなかったのですが、母国ノルウェーではアルバム・チャートの16位まで駆け上がり、バンドとしてはまずまずのスタートを切ることになりました。
しかし、翌年のセカンド・アルバムのレコーディングの直前にボーカルのダグ・インゲブリクトセンがバンドを離れてしまい、バンドはいきなりピンチに陥ってしまいます。
バンドは急遽アメリカ人のトニー・ハーネルをボーカリストに迎え、なんとかセカンド・アルバム "Knights Of The New Thunder"(邦題:ナイツ・オブ・ザ・ニュー・サンダー)をリリースします。
アメリカ人ボーカリストの加入はバンドに変革をもたらしました。ダークな部分はやや陰を潜め、サウンドはよりハード・ポップな方向に向かうこととなり、これが功を奏してか、ノルウェーのアルバム・チャートでトップ10入り(9位)を果たす結果となりました。
そして1987年、サード・アルバムの "Tell No Tales"(邦題:テル・ノー・テイルズ)がリリースされます。
母国ノルウェーのアルバム・チャートでは遂に1位を獲得し、シングル・カットした "10,000 Lovers"(邦題:10,000ラバーズ)はノルウェーのシングル・チャートで2位を記録する大ヒットとなりました。
しかし、ヨーロッパやスコーピオンズといった他の欧州出身のバンドのように大きな成功を収めるところまでは行かず、全米アルバム・チャートでは100位という結果に終わってしまいます。
1989年には4枚目のアルバム、"Intuition"(邦題:インテュイション)をリリースします。ノルウェーでのアルバム・チャートでは3位、先行シングルの "Intuition"(邦題:インテュイション)が5位と、母国での人気は相変わらず高いものがあるのですが、やはり全米での成績は芳しくなく、アルバム・チャートでは113位という結果となってしまい、その後もアメリカでのセールスを伸ばすことはできませんでした。
さて、今回ご紹介するアルバム "Intuition" ですが、オーバー・ドライブ強めのギターと金属的ハイトーンのボーカルをメインにした、北欧メタルの定番とも言うべきサウンドを展開しています。
クラシカルな部分はやや少なめですが、ドラマティックな曲構成、メロディアスなギター・リフやボーカル、分厚いコーラス・アレンジ、そして時々飛び込んでくる速射砲のようなギターの速弾き、と、割と日本人好みなサウンドではないかと思います。
そのアルバムの中でも、今日ご紹介する "Tonight I'm Falling" は抜群のデキなのではないかと思います。
曲調としては、やや押さえ目なバラードチックのメロディアス・ロックとでもいいましょうか。ジャーニーあたりを彷彿とさせるクリアーなギターのアルペジオ、美しいメロディ・ラインのリード・ボーカル、そしてスティクスあたりを思わせるようなドラマティックな構成のコーラス・パートが非常に美しくて印象的な曲です。
もちろん、間奏でのギターの速弾きソロもお約束ですね。
単体で聴いても非常に美しい曲なのですが、重いリズムとリフでこれでもかーと襲ってくるアルバムの中でも一服の清涼剤のような爽やかさを感じることのできる名曲です。
他の北欧メタル・バンドと比較しても、楽曲の完成度は非常に高いものがり、もちろんテクでも負けてはいないと思います。
注目度の低さはちょっと意外な感じがしますね。
ぜひ一度、お聴きいただければと思います。