収録アルバム "BISCAYA"(邦題:北欧の戦士)
今回は、スウェーデンのハード・ロック・バンド、ビスカヤがリリースした唯一のアルバム "BISCAYA"(邦題:北欧の戦士)から、リード・ナンバーとなる "Howl In The Sky"(邦題:ハウル・イン・ザ・スカイ)をご紹介します。
ビスカヤについては、実は多くの事はわかっていません。
1983年にスウェーデンで結成され、翌1984年にはデビュー・アルバムであるこの "BISCAYA" をリリースするのですが、特に大きな話題になることもなく、同年に4曲入りの12インチ・シングルをリリースした後に消えていってしまった、「幻のバンド」と言ってもいいでしょう。
「北欧メタル」の歴史を紐解くと、火を着けたのは、やはりヨーロッパでしょう。このバンドは、1983年にアルバム "EUROPE" でデビューするのですが、まずはどこよりも日本のハード・ロック・ファンが飛びつきました。そして、翌1984年にリリースしたセカンド・アルバム、"WINGS OF TOMORROW" でバンドの地位を確立するとともに、「北欧メタル」の存在を広く世界に印象付けました。その後の "The Final Countdown"(1986年)の大ヒットは、メタル・ファンだけでなく一般大衆の耳にさえ届く一大ムーヴメントとなったのは、皆さんご存知のとおりです。
ビスカヤがデビュー・アルバムをリリースしたのが1984年ということを考えると、ようやく「北欧メタル」が世に認知されはじめた頃で、まさに「北欧メタルの黎明期」と言ってもいい頃です。
このアルバム・リリースがもう少し遅かったら、「北欧メタル」がしっかりと根付いた頃だったら、メタル・ファンの受け取り方もまた違ったものになっていたことは否めないと思うのです。
さて、そのビスカヤのデビュー・アルバムですが、非常に振り幅の大きいアルバムで、好みが別れるところではないかと思います。
1曲目、2曲目と「これぞ北欧メタル!」と言える曲が続いて、期待感がどんどん膨らんでいくのですが、その後は、アコースティックのバラード(曲はとても美しいのですが)だったり、ドゥー・ワップ調の曲だったり、オーケストラによるシンフォニーだったり、とにかく様々なスタイルの曲が詰め込まれています。
脳髄にグイグイ来るようなメタルを期待していた方にとっては、ちょっと肩透かしを食らったような感じになってしまうと思います(実は私もその一人でした)。
ただ、今回ご紹介するアルバム1曲目の "Howl In The Sky" は、間違いなく「北欧メタル」を印象付ける、素晴らしい1曲と言えるでしょう。
「北欧メタル」のあるべき姿、進むべき道を忠実に踏襲する1曲となっています。
この "Howl In The Sky" ですが、一言で言ってしまえば、「レインボーの『スポットライト・キッド』のクラシカル・パート5割増し」とでもなりましょうか。
ツイン・バスドラが畳み掛けるスピード感、リード・ボーカルのソリッドでエッジの効いたハイトーン・ボイス、ふんだんにクラシカルな旋律を盛り込んだキーボード、そしてリッチー・ブラックモアを思わせるようなコードワークやリフを聴かせてくるギター、と、「ブリティッシュ・ハード・ロックの様式美+北欧的クラシカルな旋律」という「北欧メタル」の美味しいところテンコ盛りの最高の1曲ですね。
特に、間奏のクラシカルなキーボードのリフからのギターのメロディアスなリフのリピートが堪りません。
ディープ・パープル、レインボーあたりの系統を強く感じさせるスタイルであり、そのあたりのファンを自認される方であれば、文句なし!ではないでしょうか。
この1曲だけのためにこのアルバムを手に入れるべきだと言っても過言ではありません。
「北欧メタル」の黎明期に燦然と光を放つ名曲を、ぜひ一度お聴きください。