収録アルバム "Ray Kennedy"(邦題:ロンリー・ガイ)
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さて、今回はアメリカのシンガー・ソング・ライター、レイ・ケネディのソロ・アルバム "Rey Kennedy"(邦題:ロンリー・ガイ)から "You Oughta Know By Now"(邦題:ロンリー・ガイ → アルバムと同じタイトルでややこしい!)をご紹介します。
1946年にアメリカのフィラデルフィアに生まれたレイ・ケネディですが、1970年にアルバム "Raymond Louis Kennedy" でソロ・デビューします。が、何の話題に昇ることもなく、不発で終わってしまいます。
1976年にはカーマイン・アピス、マイク・ブルームフィールドら後にロック界を牽引していくことになるミュージシャン達とバンド「KGB」を結成し、アルバムを2枚リリースするのですが、こちらもそれほど注目されることはありませんでした。
そして1980年、AORロックの時流に乗り、デビッド・フォスターのプロデュースのもと、ウェストコーストの名だたるスタジオ・ミュージシャンのサポートを得て、ソロ・アルバム "Rey Kennedy" をリリースします。
同じ頃、日本ではシンガー・ソング・ライターの八神純子さんが9枚目のシングル「パープルタウン」をリリースします。こちらは、日本航空のCMソングに起用されたこともあり、オリコン1位を獲得するなどの大ヒットとなりました。
ところが、このヒット曲に「パクリ疑惑」が浮上してしまいます。
レイ・ケネディ側が、「パープルタウン」のメロディの一部およびアレンジが「You Oughta Know By Now」に酷似しているということで、盗作疑惑ありとクレームをつけてきたのです。
八神純子の所属する事務所(ヤマハ音楽振興会)の対応は速やかで、
■ 曲名に原曲タイトル「You Oughta Know By Now」を入れる事
■ 作曲者のクレジットに「Ray Kennedy, Jack Conrad, David Foster」を入れる事
という2点をもって、決着に至りました。
しかしながら、この「パクリ疑惑」には不可解な点が多く、
① 八神純子側の対応があまりにも速やかだったこと。
② 「パープルタウン」リリース直前の頃、八神純子が頻繁に渡米していたこと。
③ 「パープルタウン」、「You Oughta Know By Now」収録アルバムのリリース時期がほぼ同時期だったこと。
これらの事から、制作段階で両者には接点があり、「この曲使わせてねー」「いいよー」的な「共作」の口約束が既にできていたのではないか?と考えることができます。「たかが東洋の小娘に・・・」とケネディ側が軽く見ていたところ、予想を上回るヒットとなってしまい、ケネディ側が慌てて対策を迫って、八神側も「やっぱりそうだよねー」と予め想定していた対応を行った、と見るのが妥当なような気がします。
ぜひ、この2曲を聴き比べてみていただけたら、と思います。
まずは、レイ・ケネディの "You Oughta Know By Now" です。
そして、八神純子さんの「パープルタウン」です。
イントロのストリングの入り方からもうそっくりですね。
ボーカル・パートのコード進行、メロディ、ギターのリフなど、これはもう言い逃れはできないレベルです。
しかし、皮肉なことに、この「パクリ疑惑」のおかげでレイ・ケネディの日本での認知度もぐっと上がる結果となりました。
アルバム "Ray Kennedy" ですが、デビッド・フォスター(プロデュース)を筆頭に、スティーブ・ルカサー(ギター)、ジェフ・ポーカロ、マイク・ベアード(ドラムス)、マイク・ポーカロ(ベース)、ビル・チャンプリン、トミー・ファンダーバーグ(コーラス)などの西海岸の実力派ミュージシャンが名を連ねているとおり、AOR/ウェストコースト・ロックの典型的な音作りで、実に完成度の高い、一聴に値するアルバムに仕上がっています。
ケネディのちょっとしゃがれたハスキー・ボイスは、どこかR&Bの魂を感じさせるような響きがあり、ハードな曲では男臭さを演出する一方で、静かなバラードでも想定外の一体感を見せて、様々な曲調を見事に歌いこなしています。
今回ご紹介する "You Oughta Know By Now" は、スティーブ・ルカサーのギターが大活躍するポップなロックで、図太い低音のリフから間奏のソロまで、縦横無尽に弾きまくっています。ルカサーのギターを「動」とするならば、デビッド・フォスターの素晴らしいストリングス・アレンジは「静」を演出し、曲の中でのメリハリが計算し尽されている感じで実にお見事!
もちろん、ケネディのシャウト気味のボーカルはこのようなハードな曲にピッタリで、エモーショナルな緊張感に心の琴線が揺さぶられます。
アルバムの中では、バラードの "Just For The Moment" も素晴らしい作品ですね。サビに至るメロディ・ラインが実に美しく、ケネディのソング・ライティングの非凡さが証明されています。ボズ・スキャッグスが歌ってもしっくりくるであろう、都会の夜の哀愁が表現されていて、おススメの一曲です。
「パクリ疑惑」という意外なところで注目されてしまった一曲ですが、「パクられる」に値する完成度の高い素晴らしい作品だと思います。
ぜひ一度、お聴きくださいませ。