収録アルバム "Larsen-Feiten Band"
今回は、アメリカのフュージョン系ロック・バンド、ラーセン・フェイトン・バンドが1980年にリリースしたデビュー・アルバム "Larsen-Feiten Band" から、"She's Not In Love" をご紹介します。
ラーセン・フェイトン・バンドは、アメリカのキーボーディスト、ニール・ラーセンと同じくアメリカのギタリスト、バジー・フェイトンによって結成されました。
1948年、フロリダにて生まれたニール・ラーセンは、若い頃から地元のバンドで活動していましたが、1971年、23歳の時にニューヨークに拠点を移し、セッション・ミュージシャンとしての経歴をスタートさせます。
一方のバジー・フェイトンも同じく1948年にイリノイ州シカゴで生れ、ニューヨークに移り住んでバンド活動をしていましたが、1970年に結成したバンドにニール・ラーセンが加入して二人は出会いました。
このバンドは「フル・ムーン」という名前でアルバムをリリースしたのですが、すぐに解散してしまい、再び二人は別々の道を歩み始めます。
ラーセンはセッション・ミュージシャンとして活動しつつ、
・"Jungle Fever" (1978)
・"High Gear" (1979)
という2枚のアルバムをリリースしています。
フェイトンは「ラスカルズ」に加入して2枚のアルバムに参加しますが、バンドの解散に伴ってセッション・ギタリストとしての活動を開始し、スティービー・ワンダーやグレッグ・オールマンといった実力派ミュージシャンとの共演を重ね、腕を磨いていました。
そして、再びこの二人が1980年に結成したバンドが、今日ご紹介する「ラーセン・フェイトン・バンド」です。
バンドのメンバー構成はというと、
□ ニール・ラーセン: キーボード、ボーカル
□ バジー・フェイトン: ギター、ボーカル
□ ウィリー・ウィークス: ベース
□ アート・ロドリゲス: ドラムス
□ レニー・カストロ: パーカッション、ボーカル
となっています。
ウィリー・ウィークスは言わずと知れたセッション・ミュージシャンで、エリック・クラプトンやジョージ・ハリスンと共演しています。一時期、ドゥービー・ブラザーズにも加入していましたね。アート・ロドリゲスはトム・スコットやマンハッタン・トランスファーと共演しているジャズ系ドラマー、レニー・カストロはTOTOのアルバムに参加したりしている売れっ子パーカッショニストです。いやはや何とも凄いメンバーを集めたものです。
バンドのサウンドとしては、ジャズ、ロック、ポップスのエッセンスを上手く取り入れたフュージョン・サウンドといったところでしょうか。小気味よい歯切れのよいドラムス、チョッパーでノリノリのご機嫌なベースという強力なリズム・セクションに支えられて、ハモンド・オルガンを中心としたキーボードや無駄にエフェクトのかかっていないクリアで滑らかなギターが爽快なメロディを奏でています。
アルバムの曲調もバラエティに富んでいて、ミドル・テンポのリラックスしたポップス系の曲あり、しっとりとしたバラードあり、ですが、フュージョンという味付けが、ロック、AORといった当時の流行りの曲調とは一線を画す役割を見事に果たしています。
なかでも今回ご紹介する "She's Not In Love" は、とりわけフュージョンの色濃いAOR系の香りもする名曲ではないでしょうか。
まず、イントロがシンプルですが抜群のセンスです。ドラムとベースでアップ・テンポのビートで始まりますが、それに絡んでくるギターのカッティングがご機嫌にキマッてます。そこにパーカッシブなオルガンがカット・インして来て、これぞフュージョン!という爽快感と期待感で胸がトキメキますね。
フュージョンというと、割とボーカル軽視というか、むしろボーカル無しのほうが・・・という感じもありますが、このバンドに限っては、ボーカルにもしっかりと気を使ったアレンジを心掛けているようです。
この曲でも、やはりシンプルですが繊細で綺麗なコーラスがボーカル・パートを支えています。
曲中盤のボーカルがスキャットになるあたりで、パーカッションが前に出て来てビートのギヤを1段階アップさせる感じです。ノリノリのチョッパー・ベースが実に気持ちいいです。
ちなみに私の学生時代は「チョッパー」と言っていたんですけど、今は違って「スラップ奏法」と言うんですね。このブログは「チョッパー」で通しますよ!
再びボーカル・パートで一旦は落ち着いた後で、スキャットからブラスのロング・トーンに導かれるようにギター・ソロに突入します。短いソロでちょっと物足りないのですが、フェイトンの流れるような滑らかフレーズが心地よいですね。
そしてスキャット・パートのリピートで曲はエンディングへと向かっていきます。
リズム・セクションの歯切れの良さが見事な余韻を残す素晴らしい曲だと思います。
「ちょっとロックじゃないなー」なんて気分の時に、ぜひお聴きください!