収録アルバム "POWER"
前回はアメリカン・ハード・プログレの雄、カンサスの "Play The Game Tonight" をご紹介しました。
前回に引き続き、今回もカンサスの名曲をご紹介します。
今回ご紹介するのは、1986年にリリースされたアルバム、"POWER" から "Silhouettes In Disguise"(邦題:シルエッツ・イン・ディスガイズ)です。
1982年、バンドの創設者でありリード・ボーカリストのスティーブ・ウォルシュ脱退という危機に、新人のジョン・エレファンテを新たにボーカリストに迎えてアルバム "Vinyl Confession" をリリース、先行シングルの "Play The Game Tonight" が全米17位(アルバムは全米16位)まで駆け上がり、見事に危機を脱したかに見えたカンサスでした。
翌年にはアルバム "Drastic Measures"(邦題:ドラスティック・メジャーズ)をリリースするのですが、しかしアルバムは全米41位、シングル・カットした "Fight Fire With Fire" も全米58位といういまひとつ奮わない結果となってしまいます。
さらに、バンド創設時からのオリジナル・メンバーであり、プログレ指向の強いロビー・スタインハート(バイオリン)、ケリー・リヴグレン(ギター)の二人が、ハード・ポップ路線に傾倒していくバンドに音楽性の違いを感じて脱退してしまい、ここにきてバンドは活動停止に追い込まれてしまいました。
しかし、1985年、リード・ボーカリストのスティーブ・ウォルシュが復帰を宣言、同じくオリジナル・メンバーであるリチャード・ウィリアムス(ギター)、フィル・イハート(ドラム)とともにバンドの活動を再開させました。
バンドは、後にディープ・パープルの一員となるギタリスト、スティーブ・モーズを迎えるなど本格的に活動を再開し、1986年にはアルバム "POWER"(邦題:パワー)をリリースします。
このスティーブ・モーズの加入により、バンドは一気にハード・ロック・バンドにシフト・チェンジ、アルバム "POWER" では、その名の通りにパワーでグイグイ押しまくる非常に力強いサウンドを披露してくれています。
今回ご紹介する "Silhouettes In Disguise" は、そのアルバムのトップを飾る曲ですが、イントロからヘビーでパワフルなギターのリフが炸裂してきます。曲中のフィル・インから間奏のギター・ソロ、そしてエンディングと、一息つく間もなくギターが鳴りまくります。速弾き、ハーモニックス、なんでもあり!で、逆に気持ちよくスッキリするくらいですね。
もちろん、そんなギターをバックにスティーブ・ウォルシュのボーカルも冴えわたっています。中音域から高音域にかけての声のハリとノビが非常に美しい!ギターとボーカルが互いにエネルギーを供給し合っているかのように、至高のハード・ロック・サウンドが展開されています。
往年のカンサスの数々の名曲を産み出してきた、スティーブ・ウォルシュのソング・ライティングの技術も素晴らしいですね。
このアルバムでも、ハードなギター・サウンド一辺倒にはならず、ポップ調もあり、どっぷりプログレ調もあり、で、何回繰り返し聴いても聴き飽きることのない、極上のアルバムに仕上がっています。
個人的には、"Three Pretenders" や "Tomb 19" のようなプログレのエッセンスを感じさせるようなドラマティックな展開のハード・サウンドが特にカンサスらしくてオススメですね。
しかし、基本は「ハード」!
ハードなサウンドに乗った、素晴らしいギタリストとボーカリストの競演をぜひお聴きください!