前々回より「洋楽ファンならワカッて欲しい!邦楽女性ボーカル名曲集!」をご紹介しています。
第3回目、最終回の今回は、松田聖子、杏里らへの楽曲提供でも知られているシンガーソングライター、尾崎亜美さんが1981年にリリースしたアルバム「HOT BABY」から、「Love Is Easy」をご紹介します。
収録アルバム "HOT BABY"
尾崎亜美さんは1976年、シングル「瞑想」でデビューしました。
シンガーソングライターとして、女性の恋心をポップでキュートでキャッチーなメロディ・ラインに乗せた楽曲には定評があり、聴き心地のよい非常に柔らかなサウンドとボーカルに魅了されているファンも多いと思います。
自身のアルバムをリリースする傍ら、他のミュージシャンへの楽曲提供も積極的に行っており、代表曲には、
□ 「天使のウィンク」松田聖子
□ 「オリビアを聴きながら」杏里
□ 「あなたの空を翔びたい」高橋真梨子
□ 「春の予感 -I've been mellow-」南沙織
などがあります。
さて、今回ご紹介するアルバム「HOT BABY」ですが、アメリカ・ロサンゼルスにてロック/AOR界の大御所、デビッド・フォスターによるアレンジのもと、ロスの実力派スタジオ・ミュージシャンの演奏をバックに収録されました。
尾崎亜美さんの作品の中ではかなり異色なのですが、これがまた素晴らしい仕上がりになっています。
バックを務めるミュージシャンは、
□ ギター:スティーブ・ルカサー、ジェイ・グレイドン
□ ドラム:ジェフ・ポーカロ
□ キーボード:デビッド・フォスター、トム・キーン
□ ベース:ニール・スチューベンハウス
□ サックス:トム・スコット
という、1980年代AORファンであれば垂涎ものの超豪華メンバーです。
中でも、今回ご紹介する「Love Is Easy」はアルバムのトップを飾るアップテンポのフュージョン・テイストなAOR/ロックなのですが、尾崎亜美さんのソング・ライティングのセンスと実力派ミュージシャンの演奏技術が結集した素晴らしい楽曲です。
まずは、ノリノリでキレッキレのリズム・セクションが圧巻です。 正確かつ繊細なハイ・ハットの刻み、絶妙のタメが効いているオカズ、そして曲を通してキープし続ける正確なビートは、「ポーカロ=スチューベンハウス」の名コンビだからこそ産み出されるもの、と言っても過言ではないでしょう。
トム・スコットのサックスのフィル・インもセンス抜群でシビレますね。間奏のサックス・ソロは緊張感を保ちつつのドラマティックな展開に震えが来ます!
デビッド・フォスター=アレンジの陰から曲を支えるストリングスの裏メロも実に効果的です。
このような素晴らしい演奏をバックにして、惜しむらくは尾崎亜美さんのボーカルがちょっと弱いかなーという感じですね。
他にもアルバム収録曲をいくつかご紹介しましょう。
□ Prism Train
アップ・テンポのロックンロールです。ポーカロの迫力満点のドラミングに乗せてルカサーがギターを弾きまくっています。そのままTOTOのアルバムに入っても何の違和感もないでしょう!
□ Wonderer In Love
トム・キーンのピアノで始まるミドル・テンポの大人なロック・ナンバー。曲のセンスという意味ではアルバム随一に違いありません。聴けば聴くほど味わいが出てきます。トム・スコットのサックス・ソロが伸びやかで爽やかな、後味最高のナンバーです。
□ 蒼夜曲(セレナーデ)
ファンの間でも支持の高い、バラードの名曲です。デビッド・フォスターのアレンジが最高ですね。曲後半の、「2番サビ→間奏(ギター・ソロ)→サビ(リピート)」の流れが鳥肌モノです!
この「HOT BABY」リリース後、再びデビッド・フォスターの全曲アレンジによるアルバム「AIR KISS」をリリースするのですが、こちらはデビッド・フォスターが
□ ギター:マイケル・ランドウ
□ ドラム:マイク・ベアード
を引き連れて来日し、日本で製作した作品になっています。
「HOT BABY」ほどロック色は強くないのですが、デビッド・フォスターの洒落たアレンジがキラリと光る名盤です。
ぜひこちらも併せてお聴きいただければ、と思います。
アルバム "AIR KISS"