収録アルバム "The Green Album"
今回は、「プログレッシブ・ロック界の貴公子」キーボーディストでありバイオリニストでもあるエディー・ジョブソンのソロ・アルバム "The Green Album" から "Turn It Over" をご紹介します。
エディー・ジョブソンがプロ・ミュージシャンとしてのキャリアをスタートさせたのは、1972年、18歳の時にバイオリニスト、ダリル・ウェイの後任としてイギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、カーヴド・エアへの参加からでした。
その後、1973年にはブライアン・イーノの後任としてロキシー・ミュージックに参加し、またその後はフランク・ザッパ・アンド・マザーズに参加するなど、歴史も知名度もあるバンドを渡り歩いてきたのですが、今ひとつ注目されるほどの活躍ではありませんでした。
ジョブソンが一気にその知名度を上げたのは、1978年、ジョン・ウェットン率いるプログレッシブ・ロック・バンド、UKへの参加であると言えるでしょう。
後にジョン・ウェットンが、「UK結成の目的のひとつは、エディ・ジョブソンをスターにすることにある」的な発言をしているようですが、正にその通りに、UKでジョブソンは縦横無尽の活躍を見せます。
分厚いオルガンのバッキングであったり、煌びやかで繊細なシンセのソロであったり、そして華麗でスリリングなエレクトリック・バイオリンのソロであったりと、複雑なリズム・セクションに翻弄されることなく堂々と渡り合ったそのキーボード/バイオリンのプレイは、聴く者を魅了しました。
そして、UK解散後の1983年に3年の準備期間を経て、初のソロ・アルバム、"The Green Album" をリリースすることになります。
こちらは「Zinc」というバンドのクレジットがされていますが、実体はエディ・ジョブソンのソロ・プロジェクトと考えたほうがいいようです。
すべての曲の作詞・作曲を行い、キーボード、バイオリンを演奏し、リード・ボーカルをとり、編曲まで手掛けてしまうという、エディ・ジョブソンの音楽性がすべてここに凝縮されていると言っても過言ではない、ファンにとっては垂涎のアルバムとなっています。
UKで聴くことのできた、卓越したキーボード/バイオリンのプレイはこのアルバムでももちろん健在です。
中でも、今回ご紹介する "Turn It Over" はピカイチの出来で、ジョブソンの魅力満載の超カッコいい名曲だと思います。
アップ・テンポのリズム・セクションとギターのバッキングで曲はスタートし、シンセの切り込むようなリフが絡んできます。
ジョブソンのボーカルは硬質でソリッドなサウンドで、緊迫感のあるアップ・テンポの曲調と非常にマッチしていますね。
サビでは曲調がちょっと変化してのシンセの低音のリフが主導となって曲を引っ張るのですが、このパートがまたカッコいい。
そして圧巻は、間奏でのエレクトリック・バイオリンのソロですね。曲の緊張感をそのままに間奏になだれ込んでいくのですが、ディレイなどのエフェクティブなサウンドの中にも弦楽器特有の微妙な「揺らぎ」があり、魂が揺さぶられるようなカッコよさを体感できます。
イケメンで「貴公子」と称されるエディ・ジョブソンですが、紡ぎ出すサウンドはなかなかハードで芯の通った素晴らしいものになっています。
ぜひ一度、お聴きください!