収録アルバム "Breakfast In America"
今回は、イギリスのロック・バンド、スーパートランプが1979年にリリースしたアルバム "Breakfast In America" からタイトル曲の "Breakfast In America" をご紹介します。
スーパートランプはイギリスで結成され、1970年にアルバム "Supertramp" でデビューします。
このアルバムは、ブルース、ジャズ、プログレなどの要素を取り入れた、良く言えば幅広い音楽性を実現した力作であり、悪く言えばまとまり、方向性と言ったものが少々ボヤけた作品になってしまっており、セールス的には失敗作でした。
翌1971年にはセカンド・アルバム "Indelibly Stamped"(邦題:消えない封印)をリリースします。よりポップ性を強調して作られたアルバムでしたが、またもやセールス面では上手くいかず、バンドは大幅なメンバー・チェンジを断行します。
主力メンバーのロジャー・ホジソン(ギター、ピアノ、ボーカル)とリック・デイビス(キーボード、ボーカル)以外を総取り替えしたメンバー・チェンジでしたが、ここでようやく以降のバンドを支えていく不動のラインナップが集結することになり、このメンバーで入念な時間をかけて制作したサード・アルバム "Crime Of The Century"(邦題:クライム・オブ・ザ・センチュリー)は、全英4位/全米38位というヒット作になります。
サウンド面でも、プログレ的な要素を抑えて、より軽妙で聴きやすいポップス路線に転換したことがリスナーに受け入れられた大きな要因だったと思われます。
その後も、
■ 1975年 "Crisis? What's Crisis?"(邦題:危機への招待)
全英20位/全米44位
■ 1977年 "Even In The Quietest Moments..."(邦題:蒼い序曲)
全英12位/全米16位
と、コンスタントなセールスを維持していきます。
そして1979年にリリースした "Breakfast In America"(邦題:ブレックファスト・イン・アメリカ)がついに全米1位(全英3位)の大ヒットになります。
このアルバムからは4曲(イギリスでは3曲)がシングル・カットされ、
Breakfast In America(全英9位/全米62位)
The Logical Song(全英7位/全米6位)
Goodbye Stranger(全英57位/全米15位)
Take The Long Way Home(全米10位)
という、いずれも好調なセールスを記録することになりました。
日本でも、"Breakfast In America" がCMで起用されたこともあり、オリコンアルバムチャート2位というヒットとなっています。
このアルバムの音楽性という点では、重苦しくないポップなロックを基調として、バンドの結成当時からの特徴である幅広い分野の音楽=ジャズ、フュージョン、プログレなどのエッセンスを無理なく溶け込ませて、他のバンドには真似できないような独特な世界を作り出しています。
今回ご紹介する "Breakfast In America" は、ピアノのコードから始まるミディアム・テンポの軽いリズムに乗せたポップ・ソングなのですが、メロディ・ラインが儚げで少し物悲しい雰囲気で、いかにも日本人が心の琴線を震わせてしまうような曲になっています。
アレンジも非常に緻密で、特にコーラス・ワークの美しさ、そしてブラスの入り方(低音部のベース・ライン、高音部のソロ・パート)が実に効果的で、程よい湿っぽさが堪りませんね。
これらのヒットにより、トップ・バンドの仲間入りを果たしたスーパートランプですが、その後も素晴らしい作品をリリースしています。
特に、1982年にリリースされたアルバム "... Famous Last Words ..."(邦題:フェイマス・ラスト・ワーズ)に収録されている "It's Raining Again"(邦題:イッツ・レイニング・アゲイン)はシングル・カットされてスマッシュ・ヒットとなりましたが、ほのぼのとした雰囲気の佳作だと思います。
ぜひ、あわせてお聴きいただければ、と思います。