収録アルバム "PARADE"
今回は、イギリスのロック・バンド、スパンダー・バレエの4枚目のアルバム "PARADE" からのスマッシュ・ヒット "Only When You Leave"(邦題:ふたりの絆)をご紹介します。
スパンダー・バレエは、1976年にロンドンで結成されたザ・カットというバンドが母体となっています。もともとは、ローリング・ストーンズなどに影響を受けた正統派のブリティッシュ・ロックを演奏していたのですが、メンバー・チェンジを繰り返していく間に、徐々にクラフトワークらのテクノ・ポップの影響を受けて、シンセサイザーを大きくフィーチャーした享楽的なダンス・ミュージックを演奏するバンド=ニュー・ロマンティック系へと変貌を遂げていきました。
そして1980年、シングル "To Cut A Long Story Short" でデビューするのですが、当時のニュー・ロマンティック系の流行の波に乗り、全英で5位を記録する大ヒットとなり、イギリス国内では「デュラン・デュラン」と並ぶブームの旗手として、一躍脚光を浴びるようになります。
1981年にはデビュー・アルバム "Joutney To Glory" をリリース、こちらも全英では5位を記録する大ヒットとなります。
しかし、ニュー・ロマンティックの波は早くも廃れ始め、バンドも生き残るための方向転換を余儀なくされてしまいます。
ここでバンドが選択した方向は、ファンクでした。
同年にはシングル "Chant No.1" をリリースするのですが、それまでのシンセサイザー中心のダンス・ポップという路線を捨てて、思いっ切りファンクへの接近を図ります。
これが功を奏したのか、全英では3位、全米ビルボードのダンス・チャートでは22位という結果を残すことができて、バンドの新たな方向性が見えてきました。
しかし、同様のファンキーでダンサブルな路線で作成したセカンド・アルバム "Diamond" ですが、全英15位という商業的には今一歩と言う結果に終わってしまいました。
その後、シングルを "Instinction"(全英10位)、"Lifeline"(全英7位)、"Communication"(全英12位)とコンスタントに発表し、イギリスでのポジションは着実に固まっていくのですが、相変わらずアメリカでの評価は低いままでした。
そんな中で、1983年にはサード・アルバム "True" を発表します。
それまでのファンキーな路線からぐっとアダルトなコンテンポラリーに寄ったポップスにサウンドを変えたのですが、これが大正解で、シングル・カットした "True" は全英1位、全米4位の大ヒットとなりました。
念願のアメリカ進出がここに来てやっと結果が出ましたね。アルバム自体も全英1位、全米19位というヒットを記録することになります。日本でもこの曲でバンドの知名度が一気に急上昇しました。
大ヒット曲 "True" は1980年代を代表するポップ・ソングと呼んでもいいでしょう。映画やCMなど様々なところでBGMとして使われて、バンドの代名詞になっています。
そして、アダルト・コンテンポラリーの路線を継承して1984年に4枚目のアルバム "Parade" をリリースします。
スパンダー・バレエの色を決めているのが、トニー・ハドリーのボーカルとスティーブ・ノーマンのサックスと言えるでしょう。
トニーの憂いを含んだ色気たっぷりの艶やかなボーカルは、特にマイナー調の曲で真価を発揮するように思います。男の悲哀、哀愁、虚勢などがプンプンと漂ってくる声質には、ちょっとゾクゾクしますね。
スティーブのサックスもムード作りには欠かせないワン・ピースです。
今回ご紹介する "Only When You Leave" でも、トニーのボーカルとスティーブのサックスは実にいい味を出しています。アルバム "Parade" のトップを飾る、アップ・テンポの名曲ですが、全米のチャートでは24位というスマッシュ・ヒット止まりでした。
しかし、トニーのボーカルは言うに及ばず、イントロのギター、サビのコーラス・ワークとギターのバッキング、間奏のサックス・ソロと、文句のつけどころがないですね。
この曲だけでなく、アルバムを通して言えることですが、ボーカル、ギター、サックスなどのサウンドが実にクリアで、濁りがないですね。非常にきめ細やかな処理をしているという印象を受けます。「ソフィスティケイト(洗練された)」という言葉がピッタリハマる音です。
スパンダー・バレエ="True" という一般的な図式にはなっていますが、個人的には "Parade" の方が断然気に入っています。
ちょっとキザめのアップ・ビートに、ぜひ乗ってみていただきたいと思います。