収録アルバム "Rumours"(邦題:噂)
今回ご紹介するのは、イギリスのロック・バンド "Fleetwood Mac" の11枚目のアルバム "Rumours"(邦題:噂)から "The Chain" です。
フリートウッド・マックは、1968年にイギリスでミック・フリートウッドとジョン・マクヴィーを中心として結成されました。
デビュー当初は泥臭いブルース・ロックを得意としていたバンドだったのですが、
1970年にボブ・ウェルチ、クリスティン・マクヴィー(ジョン・マクヴィーの妻)がメンバーに加わり、サウンド面での主導権をボブ・ウェルチが握るようになると、それまでのブルース色は徐々に薄れていき、ジャズのエッセンスを匂わせる、ポップ・ロック的な楽曲を主体とするバンドに変貌していきます。
優れたアルバムを3枚発表し、ツアーでも多くの観客を集めるなど、活動は順調だったのですが、カリフォルニアに拠点を移して本格的なアメリカ進出を企てていたその矢先に、バンドのフロントマンであるボブ・ウェルチが脱退してしまいます。
ウェルチに代わるメンバ-を探していたミック・フリーとウッドとジョン・マクヴィーでしたが、オーディションで「バッキンガム・ニックス」という男女デュオの歌声を耳にした二人は、このデュオをバンドに迎え入れる決断をし、ここにバンドの黄金期のメンバーである
・ミック・フリートウッド
・ジョン・マクヴィー
・クリスティン・マクヴィー
・リンジー・バッキンガム
・スティービー・ニックス
の5人が揃うことになります。
再び生まれ変わったフリートウッド・マックは、1975年に10枚目のアルバム "Fleetwood Mac"(邦題:ファンタスティック・マック)をリリース、このアルバムからは "Say You Love Me"、"Rhiannon" などがヒットし、アルバムも全米1位に輝くなど、これまでにない成功を収めることになりました。
そして1977年、最大のヒット作となる11枚目のアルバム "Rumours"(邦題:噂)をリリースします。
このアルバムからは、"Go Your Own Way"、"Dreams"、"You Make Loving Fun"、"Don't Stop" などの大ヒットが生まれ、アルバムは31週間にわたって全米1位をキープし、1700万枚という空前のセールスを記録することになり、フリートウッド・マックは一躍スーパースターの座へと躍り出たのでした。
フリートウッド・マックの魅力は、3人のボーカリストの複雑に絡み合うコーラスにあると言えるでしょう。
ポップで張りのある声質のリンジー、穏やかで暖かい歌声のクリスティン、小悪魔的な容姿からは想像しにくい野性的でちょっとしゃがれたダミ声のスティービーという、全く個性の違う3人の声が、ある曲ではその曲の世界観を最も効果的に表現できるシンガーがリードを取り、またある曲では異質な3人の声が時には美しいハーモニーを奏で、時にはぶつかり合うようなハモリを聴かせるなど、無限のパターンがあるかのようなコーラス・ワークを披露してくれます。
ですが、後のインタビューでは、当時は人間関係が崩壊寸前だったことを明かしています。
ミックは妻と別れ、ジョンとクリスティンのバンド内夫婦も離婚し、当時交際中だったリンジーとスティービーも冷え切った関係になり、いつ空中分解してもおかしくない状況の中で「噂」はレコーディングされたと言います。
さて、今回ご紹介する "The Chain" ですが、"Go Your Own Way" などのヒット曲の陰に隠れてはいますが、独特な味わいのある名曲です。
バスドラの強いリズム、シタールを連想させるギターの響き、読経的なボーカルから一転、ロック調のサビでの印象的なコーラスなど、フリートウッド・マックの懐の深さを感じることができます。
"Never break the chain"(誰も私達の絆を断ち切ることはできない)と歌う歌詞も、レコーディング当時の人間関係を考えると、実に奥深いものがありますね。
どの曲についても、サウンド的には確かに1970年代の音で、決して新しくはないのですが、メロディ、アレンジ、コーラスなど今聴いても古臭さを全く感じさせないのはスゴイことです。
ぜひ、耳を傾けていただきたいバンドです。