収録アルバム "ORION THE HUNTER"
今回は、アメリカのロック・バンド "ORION THE HUNTER" のデビュー・アルバムに収録されている "All Those Years" をご紹介します。
1976年にアルバム "BOSTON"(邦題:幻想飛行)でアメリカのロック・シーンに華々しくデビューしたボストンについては以前に書きましたが、そのボストンの初代ギタリストであるバリー・グドローがボストン脱退後に結成したバンドがこのオリオン・ザ・ハンターです。
1984年というと、1978年にボストンが2枚目のアルバム "Don't Look Back" をリリースしてから6年が経過しており、「ボストンの次のアルバムはまだか」とファンが首を長くして待ち焦がれていた時だったので、「ボストンの元ギタリストが作ったバンドのアルバム」というのは非常にタイミングがよく、話題性にも事欠かなかった訳ですが、残念ながら一部の熱烈なファンからは支持されたものの、商業的にはあまり大きな成功を収めることができず、オリオン・ザ・ハンター自体もこの1枚のアルバムだけ残して解散ということになってしまったのでした。
そのサウンドは、ボストンの延長線上と考えていると、ちょっと違います。
曲調としては、70~80年代のアメリカン・ロックにより近い、シンプルで力強いロックを基調としています。サウンド面では、ボストンがギターのオーケストレーションをメインに何重にも積み重ねられた分厚い音が特徴だったのに対し、むしろキーボード(シンセサイザー)を構成のメインに据えて、ギターをバランスよく配置しているという感覚に近く、大袈裟な多重録音はせずに必要最低限の積み重ねで作られているという印象です。
ボストンを期待してしまう人にはちょっと物足りない感があると思いますが、個人的には、ボストンというよりは、スターシップあたりがいかにも演りそうなサウンドだったりして、聴きながらニヤけてしまいますね。
今回取り上げた "All Those Years" は、アルバムのトップを飾るのに相応しい、軽快なギターのリフで始まるノリのいい曲です。リード・ボーカルのフラン・コスモの突き抜けるようなハイトーン・ボイスが印象的ですね。
単調なロックかと思いきや、サビからのメロディックな展開が絶妙に効いていて、「只者じゃないぞ」と思わせる、秀逸なオープニング・ナンバーです。
オリオン・ザ・ハンターとしては唯一のアルバムなのですが、バンドの解散後、バリーは "RTZ"(Return To Zero)というバンドを結成します。こちらには、ボストンでリード・ボーカルをとっていたブラッド・デルプがボーカルとして加入し、オリオン・ザ・ハンターでリード・ボーカルだったフラン・コスモが、ブラッド・デルプの後釜としてボストンに加入しています。
なんか、他のバンドでもよくありますが、人間関係ややこしいですね。