収録アルバム "Rise"
時には、ゆったりとした時間の流れに身を任せて・・・
ロックというジャンルからはちょっと外れますが、非常に好きな曲なのでご紹介したいと思います。
トランペット奏者のハーブ・アルパートが1979年にリリースしたアルバム "Rise" のタイトル曲、"Rise"です。
ハーブ・アルパートという名前は聞いたことがないという方でも、ニッポン放送のラジオ深夜番組「オール・ナイト・ニッポン」のテーマ曲と言えば、ピンとくる方は多いのではないでしょうか。
あれは、決してラジオ番組のために作られた曲ではなく、ハーブ・アルパートの "Bittersweet Samba"(ビタースィート・サンバ)という曲なんですね。
さて、ハーブ・アルパートですが、1962年からミュージシャンとしての経歴をスタートさせています。"Tijuana Brass"(ティファナ・ブラス)というバンドを率いて、アルバムを何枚かリリースしているのですが、先ほどの "Bittersweet Samba" は、1965年リリースの "Whipped Cream & Other Delights" というアルバムに収録されています。
1969年にバンドは一旦解散するのですが、その後また再結成し、アルバム・リリースやライブ・ツアーも精力的に行っていました。
それと並行して、1970年代から1990年代にかけて、ソロ・ミュージシャンとしての活動も活発に行っており、その中で1979年にリリースしたのが、今回ご紹介する "Rise" になります。
基本的にはトランペットのアルバムなので、まるで歌っているかのようなメリハリ、強弱などの表情のあるトランペットの演奏を堪能できます。モスクワ・オリンピックのテーマ曲でもある "1980"の戦場での雄叫びのようなトランペットの響き、アランフェス協奏曲を巧みなアレンジでカバーした "Aranjuez" での勇ましくも哀愁を帯びたトランペットの音色・・・。ですが、聴きどころはそれだけではなく、当時の流行のディスコ・ビートやフュージョンなども取り入れた、洋楽が好きな方ならスンナリと入ってくるような曲調であったり、トランペット以外のパートのアレンジの完成度の高さなども注目すべきところかと思います。
アルバム・タイトル曲の "Rise" ですが、全米1位のヒットとなりました。日本でも車のCMなどで使われており、結構ヒットしたのではないかと思います。
ベース・メインのミディアム・テンポのリズム・パートから曲は始まります。
ピアノ、ギターが重なり、ちょっとしたパーティを連想させるような楽しげな手拍子、歓声などが効果的に曲を盛り上げていきます。
そして、トランペットの主旋律は、非常にゆったりとしたテンポで、汚れのない清々しい音色で、聴く者を魅了して止みません。
曲を聴いた時に頭に浮かぶイメージとしては、南の島の浜辺、初夏の夕暮れ、パーティが終わった後で気の置けない仲間たちと交わす軽めのカクテル・・・といったところでしょうか。
リリース当時に見たPVもとても印象的でした。撮影スタジオ?で曲にあわせて女性とステップを踏むシーン、そして浜辺をゆっくり歩きながらトランペットを吹くシーン・・・。大人な感じが(当時まだ若かった私としては)ちょっと眩しかったですね。
たまにはこんな音楽を聴きながら、忙しい日々を忘れてゆったりとした時間に身を置く事も必要だなーとしみじみと思います(笑)。
PS:
ちなみに、ハーブ・アルパートには実業家の顔もあり、アメリカのA&Mレコードの創設者でもあります(A&Mの"A"は、Alpertの"A")。
カーペンターズを発掘した人でもありますね。