収録アルバム "Leftoverture" (邦題:永遠の序曲)
今回はアメリカン・ハード・プログレの雄、カンサスのヒット・チューン "Carry On Wayward Son" (邦題:伝承)です。
1974年のデビュー以来、メンバー・チェンジなどで多少の変化はあったものの、頑なにそのスタイルを貫き通し、今なお現役で活動しているのは、驚くべきことであり、同時に本当に素晴らしいことです。前の回で、路線変更して成功を収めたバンドの話を書きましたが、もちろん路線変更せずにその道を究めて成功したバンドも数多くあるわけで、カンサスはその代表格とも言えるでしょう。
カンサスの魅力というのは、「アメリカン・ハード・プログレ」というジャンルでも表されるとおり、アメリカン・ハード・ロックの荒々しさ、武骨さを基本として、プログレッシブ・ロックの繊細さ、ストーリー性を兼ね備えているところでしょう。ギター、キーボード、バイオリンという楽器の力強いリフと重厚なオーケストレーション、変拍子などの複雑なリズム構成を正確に刻むリズム隊、圧倒的な迫力と表現力のボーカル・パート・・・どの作品のどの曲をとっても、一級品であることは間違いありません。
今回の "Carry On Wayward Son" は全米11位を記録したヒット曲で、美しいサビのコーラスから始まります。ドラムのフィル・インから一転、力強くフレーズが印象的なギターのリフ、そしてぐっとテンション抑え目でスタートするボーカル・パートですが、クライマックスに向けて徐々に盛り上がりを見せます。1曲の中での起承転結というか、メリハリ、強弱のコントラストが計算され尽くされた、実に聴き応えのある、カッコイイ作品だと思います。
歌詞もいいですよね。
"Carry On My Wayward, Son." (我が子よ、前へ進むのだ。)
そのサウンドが表すとおりに、ひ弱ではない、どっしり構えた優しさが感じられる、心を打つ詩ですね。