70ー80年代ロック名曲セレクション

ハード、ポップ、プログレ、ファンク、・・・等々、1970ー1980年代の洋楽ロックの名曲を独断と偏見でご紹介。この曲達を聞かずして、ロックを語ること無かれ。

アダルト・コンテンポラリーの帝王の記念碑的な出世作! Boz Scaggs  "Lowdown"  (1976)



収録アルバム "Silk Degrees"(邦題:シルク・ディグリーズ)


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今回は、アダルト・コンテンポラリーの帝王、ボズ・スキャッグスの7枚目のスタジオ・アルバム "Silk Degrees"(邦題:シルク・ディグリーズ)から、全米3位の大ヒット曲 "Lowdown"(邦題:ロウダウン)をご紹介します。

  

1944年、アメリカのオハイオ州で生まれたボズですが、その音楽の経歴は高校時代にスティーブ・ミラーと出会ったところから始まります。二人は同じ大学に進み、ブルース・バンドを組んで活動を行っていました。

 

大学卒業後、ボズはスティーブ・ミラーから離れて、単身ロンドンに渡ります。当時のロンドンは白人によるリズム&ブルースが盛んで、ボズの音楽指向にはこれとない場所でした。

いくつかのバンドでプレイしていたボズでしたが、そこでレコード会社の目に留まり、1965年にアルバム "Boz" でデビューを飾ります。

 

その後、アメリカに戻ったボズは旧友スティーブ・ミラーのバンド「スティーブ・ミラー・バンド」にギタリストとして参加します。このバンドで2枚のアルバムを発表の後、1969年にはアルバム "Boz Scaggs"(邦題:ボズ・スキャッグス&デュアン・オールマン)でアメリカでのソロ・デビューを果たします。しかしながら、当時のR&B色の濃いロックはあまり大衆には受け入れてもらえず、何枚かのアルバムをリリースしたものの、セールス的には大きな成功を手に入れることはできませんでした。

 

この状況に対してボズは、当時流行していたファンクの要素を取り入れたアダルト・コンテンポラリーなロックへのチャレンジを試みます。

アメリカ西海岸の著名なスタジオ・ミュージシャンのサポートを得て、1976年にアルバム "Silk Degrees"(邦題:シルク・ディグリーズ)をリリースしたところ、これが大正解で、500万枚以上を売り上げて全米2位という大ヒットを記録することになりました。

 

このアルバムからシングル・カットした "Lowdown"(邦題:ロウダウン)も全米3位となる大ヒットを記録しています。

また、今ではAORのスタンダード的なナンバーとなっている "We're All Alone"(邦題:ウィアー・オール・アローン)もこのアルバムに収録されています。当初はシングル "Lido Shuffle"(邦題:リド・シャッフル)のB面だったのですが、1977年にリタ・クーリッジによるカバーが全米7位のヒットとなり、それがきっかけでその後多くのアーティストによってカバーされて、この曲の良さが再評価されることになりました。

 

このアルバムに参加したスタジオ・ミュージシャンのうち、ジェフ・ポーカロ(ドラムス)、デビッド・ペイチ(キーボード)、デビッド・ハンゲイト(ベース)がこの時の共演をきっかけとしてTOTOを結成するに至ったのは有名な話です。

それを念頭に置いてアルバムを聴いてみると、確かにいろいろなところでTOTOの面影を感じ取ることができますね。

デビッド・ペイチのピアノやシンセサイザーのアレンジであったり、ジェフ・ポーカロとデビッド・ハンゲイトのタメの効いた符点四分音符で構成されるエイト・ビートなど、TOTOファンであれば「お!」と思わせるフレーズが随所に出てきますが、中でも "Lido Shuffle" などは、TOTOのアルバムに収録されていても何の違和感もないのではないでしょうか。

ジェフ・ポーカロ得意の三連シャッフルで絶妙な「揺れ」と「ノリ」があり、間奏でのシンセサイザーによる三連のリフもお馴染みのフレーズですね。

 

しかし何と言ってもこのアルバムで注目すべきなのは、そのような強力なバックのミュージシャンに支えられた、ボズの見事な歌声です。

喜び、悲しみなどの感情をすべて包括するかのような、気品のある優しい歌声は、実に耳障りが良く、その耳を通して心の中に何の抵抗もなくスーっと入って来て、ジンワリと染み渡るようです。

さらには、アップ・テンポの曲でもバラードでも、どんな曲調でも歌いこなしてしまう歌唱力も素晴らしいですね。「アダルト・コンテンポラリーの帝王」の名に恥じない歌声であり、スキルであると思います。

 

さて、今回ご紹介する "Lowdown"(邦題:ロウダウン)ですが、全米3位を記録したミドル・テンポのソウルフルなナンバーです。

先ほども少し書きましたが、リズム・セクションの「溜め」と「ノリ」の効いた符点四分音符のエイト・ビートに乗って、シンセサイザーが軽やかなリフを奏でます。

ボズのボーカルに絡むソウルフルな女性コーラスがいいですね。

ややおとなしめのスタートですが、曲中盤のギター・ソロあたりからテンションが一段上がり、ベースの音数も増えてきて全体の緊張感が増してきたかと思うと、またスッと元のテンションに戻るというアレンジのアクセントがまた絶妙です。

 

この作品あたりから隆盛を見せ始めるアダルト・コンテンポラリーというジャンルが、日本に輸入されて「AOR」として根付いていく事を考えると、記念碑的な意味合いもある作品だと思います。

 

期間限定版ということで、CDもかなりお手頃な価格で出ているようです。

アダルト・コンテンポラリーの名盤、ぜひ一度、お聴きくださいませ。

 

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