70ー80年代ロック名曲セレクション

ハード、ポップ、プログレ、ファンク、・・・等々、1970ー1980年代の洋楽ロックの名曲を独断と偏見でご紹介。この曲達を聞かずして、ロックを語ること無かれ。

無機質な電子サウンドに情感溢れるボーカルが乗ったテクノ・ポップの名曲! The Human League  "Don't You Want Me"  (1981)



収録アルバム "DARE!"(邦題:デアー!)


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今回は、イギリスのテクノ・ポップ・バンド、ヒューマンリーグが1981年にリリースしたアルバム "DARE!" から、全米1位の大ヒット曲 "Don't You Want Me"(邦題:愛の残り火)をご紹介します。

 

1977年にマーティン・ウェアイアン・クレイグ・マシューは「デッドドーターズ」を結成しますが、その後ボーカリストとしてフィリップ・ウォーキーを迎えて、1979年にヒューマンリーグとして、アルバム "Reproduction"(邦題:リプロダクション)にてデビューします。

 

このアルバムはイギリス国内でそこそこの評価を獲得(全英チャート34位)することができ、1980年にはセカンド・アルバム "Travelogue"(邦題:トラヴェローグ)をリリース、こちらも全英チャート16位と、まずまずのセールスとなりました。

 

しかし、ここでバンド創設者のマーティン・ウェアとイアン・クレイグ・マシューが脱退してしまい、残されたフィリップ・ウォーキーは窮地に陥ってしまいます。

このピンチに、フィリップ・ウォーキーは地元シェフィールドのクラブでスーザン・アン・サリー、ジョアンヌ・キャトラルという二人の女性をスカウトして、ボーカリストとしてバンドに迎え入れて、新生ヒューマンリーグがスタートすることになりました。

 

1981年には新たな女性ボーカルをフィーチャーしたサード・アルバム "DARE!"(邦題:デアー!)をリリースしますが、これが大成功を収めて、全英1位、全米でも3位という輝かしい記録を樹立することになり、このアルバムからシングル・カットした "Don't You Want Me"(邦題:愛の残り火)も全英、全米ともに1位を記録するという大ヒットで、テクノ・ポップの旗手としてヒューマンリーグの名を世に知らしめる結果となったのでした。

 

アルバム "DARE!"、そしてシングル "Don't You Want Me" が大ヒットした要因というのはいくつかあると思います。

 

まずは、基本的なところで楽曲が素晴らしいということですね。

彼らの音楽は、ジャンルで言うと「エレクトリック・ポップ」「テクノ・ポップ」などと呼ばれます。その特徴はシンセサイザー、シーケンサーなどの電子楽器を駆使して創作されるシンプルでポップでスペイシーなサウンドですが、一歩間違うと、どれも皆同じ曲に聞こえてしまうというリスクを抱えています。

アルバム "DARE!" もその傾向がありますが、リズム・セクションの構成を変化させたり、シンセサイザーの音色を変化させたり、コーラス・パートを工夫したりして、それぞれの曲に豊かな表情を持たせることに成功していますね。

 

そして、次なる要因としては、MTVでのヘビー・ローテーションがあげられると思います。

アルバムがリリースされた1981年というと、ちょうどMTVが放送を始めた年でもあります。この頃から各バンドがPVの制作にも力を入れ始めるのですが、彼らも "Don't You Want Me" のリリースにあたっては、ストーリー仕立ての非常に印象的なPVを作成しており、これがMTVでガンガン流されたことも無視できない要因でしょう。

 

そして最後の要因ですが、第二次ブリティッシュ・インヴェイジョンの波に乗った、ということだと思います。

ブリティッシュ・インヴェイジョンとは、ある時期にイギリスのアーティストがアメリカを始めとする世界中で大ヒットを放ってブームを巻き起こし、その後の音楽業界に大きな影響を与えたことを指します。

第一次の波は、1960年代中盤にビートルズ、ローリング・ストーンズ、ザ・フーなどのロック・バンドがアメリカで巻き起こした旋風でした。当時、強烈なスター不在のロック界に、周到なプロモーション戦略のもとでビートルズがアメリカに乗り込んで大成功を収めたのを皮切りに、多くのイギリスのバンドがアメリカに進出して全米のヒットチャートを席巻したのでした。

そして第二次の波は、1980年代前半、デュラン・デュラン、カルチャー・クラブに代表されるイギリスのバンドがアメリカで巻き起こした旋風です。

1970年代後半、イギリスではパンク・ロックの隆盛が社会的な現象となりました。このパンク・ロックは、他の音楽ジャンルや思想と融合してニュー・ウェイブへと進化していくのですが、これに、伝統的な(古臭い)ロックやディスコ・サウンドに飽きてきていたアメリカのファンが飛びつき、一大ムーヴメントへと発展したのでした。この機に、イギリスの多くのバンドが(先に述べたMTVをプロモーションの道具として積極的に活用して)アメリカ進出を果たし、先のバンドのほか、ワム、スパンダー・バレエ、そしてヒューマンリーグなどが全米チャートを大いに賑わすことになったのです。

  

さて、今回ご紹介する "Don't You Want Me" ですが、アルバム "DARE!" のラストを締める曲になっています。

16ビートのリズム・マシンに乗ったシンセサイザーの重厚な和音によるドラマチックなリフから曲はスタートします。ボーカル・パートになると、このバンドの特徴でもある、フィリップ・ウォーキーの艶のあるちょっと色っぽくてちょっとキザッぽい、伊達男を思わせるボーカルが、バックの電子音の無機質的な演奏とのコントラストで、より情感が強調されていい雰囲気を醸し出しています。

サビの「Don't you want me, baby・・・」のリピートも、キャッチーなメロディで強烈に印象に残りますね。

 

テクノ・ポップというと、生粋のロック・ファンからは敬遠されがちではありますが、ボーカル、メロディ、アレンジが優れた名曲も存在します。

この "Don't You Want Me" はそんな一曲だと思いますので、まだお聴きでない方は、ぜひ一度耳を傾けてみてくださいませ。

 

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