70ー80年代ロック名曲セレクション

ハード、ポップ、プログレ、ファンク、・・・等々、1970ー1980年代の洋楽ロックの名曲を独断と偏見でご紹介。この曲達を聞かずして、ロックを語ること無かれ。

プログレとエレクトロ・ポップが最高レベルで見事に融合した名曲! YES "Owner Of A Lonely Heart" (1982)



収録アルバム "90125"(邦題:ロンリー・ハート)


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今回は、前回に引き続きイエスの楽曲をご紹介します。

本日ご紹介するのは、イエスのアルバム "90125"(邦題:ロンリー・ハート - 90125)からの全米1位の大ヒット曲 "Owner Of A Loney Haert"(邦題:ロンリー・ハート)です。

 

1970年代、順調に活動を続けていたイエスでしたが、音楽性の違いなどによるメンバーの入れ替わりが激しく、1978年に9枚目のアルバム "Tormato"(邦題:トーマト)のリリース後に、オリジナル・メンバーであったボーカルのジョン・アンダーソン、そしてアルバム "Fragile"(邦題:こわれもの)以降イエスのサウンドを支えてきたキーボードのリック・ウェイクマンが脱退してしまいます。

 

ボーカルとキーボードを失ったイエスは、同じマネージメントに所属していたバグルスを丸ごと吸収し、トレバー・ホーン(ボーカル)、ジェフ・ダウンズ(キーボード)という新しいメンバーを加えて活動の継続を試みます。

この編成で1980年に10枚目のアルバム "Drama"(邦題:ドラマ)をリリースし、アメリカとヨーロッパでツアーを行ったのですが、アルバム、ツアーともに商業的には良い結果を残すことができず、結局このまま活動を停止することになったのでした。

 

イエスの活動停止中、メンバーはいろいろなプロジェクトに参加していましたが、なかでも最も大きな成功を収めたのは、スティーブ・ハウとジェフ・ダウンズでした。二人はジョン・ウェットン率いるバンド、エイジアの結成に名を連ね、そのエイジアはデビュー・アルバム "エイジア"(邦題:詠時間~時へのロマン)がイエスでは成しえなかった全米1位を記録するなど、スーパー・グループの名に恥じることのない華々しいデビューを飾ったのです。

 

一方、クリス・スクワイア(ベース)、アラン・ホワイト(ドラム)の二人は、イエス結成時のキーボーディスト、トニー・ケイと南アフリカ出身のマルチ・プレイヤー、トレバー・ラビンを加えてシネマというバンドを結成します。

そのバンドにジョン・アンダーソンがボーカルとして参加することになり、これがイエスの再結成へと発展していくことになります。

 

再結成したイエスは、1983年にトレバー・ホーンのプロデュースにより11枚目のアルバム "90125"(邦題:ロンリー・ハート - 90125)をリリースします。

このアルバムは全米5位という大ヒットを記録し、再びイエスに栄誉と輝きを与える作品となりました。シングル・カットされた "Owner Of A Lonely Heart"(邦題:ロンリー・ハート)は全米を始めとして各国のヒット・チャートで1位を記録する大ヒットとなり、バンドは結成以来最大の成功を手に入れることになったのです。

 

アルバム "90125" のクレジットは以下のとおりです。

□ ジョン・アンダーソン(ボーカル)

□ クリス・スクワイア(ベース&ボーカル)

□ トレバー・ラビン(ギター、キーボード&ボーカル)

□ アラン・ホワイト(ドラム)

□ トニー・ケイ(キーボード)

(プロデュース:トレバー・ホーン)

 

メンバーの長年の経験で培ってきた演奏技術が再び最高のレベルと最高のバランスで発揮されたことがその成功の理由には違いないのですが、もう一つの理由として忘れてはならないのは、トレバー・ホーンによるそれまでのイエスの作風に囚われないエレクトロ・ポップのエッセンスを加えた斬新なアレンジです。

サンプリング音源が多用され、特にオーケストラル・ヒットなどの効果音が実に効果的に使われています。また、全体的にリバーヴを深めにかけたスペイシーなサウンド空間がイエスのプログレッシブな楽曲に見事にマッチし、 ひときわ幻想的な世界を生成しています。

また、コーラスのアレンジも素晴らしいものがあり、囁くようなフレーズ、パーカッシブなフレーズなどを場面により使い分けており、ボーカルがあたかも一つの楽器のようにアレンジされているのが非常に興味深く、また効果的です。

 

誤解を恐れずに言うとすれば、これはイエスのアルバムではなく、トレバー・ホーンがイエスという素材で作り上げたアルバム、と言っても過言ではないでしょう。 

 

今回ご紹介する "Owner Of A Loney Heart"(邦題:ロンリー・ハート)ですが、全米1の大ヒット曲であり、上述のトレバー・ホーンによるアレンジが完璧なまでに凝縮されている名曲です。

リバーヴ深めのドラムのフィル・インからオーバードライブ深めのギターのリフ、そして一転してシンプルなギターのリフにシンプルなリズム・セクション、時々突っ込んでくるオーケストラル・ヒット・・・もうこれ以上はないというくらいに魅力的で楽しさを感じさせるイントロです。

ボーカル・パートに入っても、ギミックの効いたアレンジが存分に味わえます。間奏のギター・ソロも一筋縄では行かない感じで、聴いていて楽しいですね。

 

このアルバムには、"Cinema" という名曲もあります。

短いインストルメンタル・ナンバーなのですが、全編をとおしてやはりリバーヴ深めのスペイシーなサウンドの中で、ギターの緊張感たっぷりのスリリングなソロが繰り広げられ、幻想的であり、非常に印象に残る曲です。

 

その後、バンドは再びメンバー・チェンジを繰り返すこととなり、このような商業的な成功も遠のいてしまったのですが、今もなお活動を続けています。

 

バンドとして最も大きな輝きを放っていた頃の名曲を、ぜひお聴きください。

 

次回は、おまけというか番外編になりますが、1990年代のイエスについて少し書いてみたいと思います。