70ー80年代ロック名曲セレクション

ハード、ポップ、プログレ、ファンク、・・・等々、1970ー1980年代の洋楽ロックの名曲を独断と偏見でご紹介。この曲達を聞かずして、ロックを語ること無かれ。

若くして逝った悲運のギタリストが奏でるボサノバ・タッチの名曲! Tommy Bolin "Savannah Woman" (1975)



収録アルバム "Teaser"(邦題:炎のギタリスト)


amazonでこのアルバムをチェックする

 

今回は、アメリカのギタリスト、トミー・ボーリンの初のソロ・アルバム "Teaser"(邦題:ティーザー)から "Savannah Woman" をご紹介します。

 

アメリカのアイオワ州出身のトミー・ボーリンは、1968年、17歳の時にハード・ロック・バンド "Zephyr"(ゼファー)のギタリストとして、ミュージシャンのキャリアをスタートさせます。


その後いくつかのバンドを経た後で、1973年、ジャズ・フュージョン系ドラマー、ビリー・コブハムのソロ・アルバム "Spectrum"(邦題:スペクトラム)に参加するのですが、そこでの非常に多彩でアグレッシブなプレイが周囲からの高い評価を得ることになります。

 

そして、当時すでに商業的な成功を収めていたアメリカのロック・バンド、ジェームス・ギャングに(同バンドのギタリスト、ジョー・ウォルシュの推薦により)加入するのですが、1年ほどで脱退し、自身のソロ・アルバム制作に取り掛かります。
デビッド・フォスター、ジェフ・ポーカロ、フィル・コリンズ、ヤン・ハマーなど、後年音楽シーンで大活躍するメンバーを集めて作成されたソロ・アルバム "Teaser"(邦題:ティーザー)は、若い天才ギタリストのアイデアと情熱が詰まった素晴らしい作品に仕上がり、トミー・ボーリンの名を広く世間に知らしめることとなります。

 

トミー・ボーリンに対する評価というのは、非常に難しいものがあり、一般的にも白黒はっきり別れたような状態になっています。これは、トミーが麻薬常習者であったことが起因しているのは間違いありません。


ソロ・アルバムのリリース後にトミーはリッチー・ブラックモアの後任ギタリストとしてディープ・パープルに加入します。これには、ジョン・ロードが先のビリー・コブハムのアルバムでのトミーのプレイに衝撃を受けて、パープル加入を打診したという逸話が残っています。


パープルでのアルバム "Come Taste The Band" では素晴らしいプレイを披露し、世間からの評価も上々だったのですが、続くライブ・アルバム "Last Consert In Japan" では、東南アジアの粗悪なヘロインの摂取が原因で手と指がマヒしてしまい、ボトル・ネックでのプレイしかできないという状態で、エフェクターで誤魔化したプレイによってたちまち「下手くそギタリスト」のレッテルが貼られてしまい、トミーの評価も地に落ちてしまう結果となりました。

加えて、トミーのギター・プレイの特徴として、速弾きをあまりせずにロング・トーンや同じフレーズのリピートを多用するスタイルが、マシンガン・プレイ信望派の多いハード・ロック・ギタリスト・ファンに受け入れられなかった、という事情もあるかと思います。

 

しかしながら、初のソロ・アルバム "Teaser" は、非常にアイデアの溢れた、アグレッシブで情熱的なプレイを展開しており、曲調もソウルフルなハード・ロックからアコースティックなバラードまで幅広くカバーしていて、若きギタリストの才能が垣間見れる素晴らしいアルバムに仕上がっています。

 

何曲かご紹介ですと、アルバムのトップを飾る "The Grind" イントロのギターのキャッチーなリフが印象的な、軽快なロック・ナンバーです。リラックスしたボーカル・パートがいいですね!デビッド・フォスターがピアノ、ジェフ・ポーカロがドラムで参加しています。
また、"Homewrd Strut" ギターとシンセサイザーの低音域での重いユニゾンのリフがカッコいいインストルメンタル・ナンバーです。途中のギターのカッティングはファンキーな香りもして、トミーのアレンジ・センスの非凡さがうかがえます。この曲でも、デビッド・フォスターがシンセサイザー、ジェフ・ポーカロがドラムを担当しています。

そんな中で、今回ご紹介する "Savannah Woman" は異色の一曲です。
アコースティックなボサノバ・タッチの静かな曲ですが、他の曲と同一人物が弾いているとは思えない、繊細なタッチのギターが美しく響いてきます。間奏とエンディングでのギター・ソロと、後ろから絡んでくるピアノとのコンビネーションがいい味出してます(ピアノもトミー自身が演奏しているようです)。控えめに参加しているパーカッションは、なんとフィル・コリンズなんですねー。

ハード、ポップス、ファンキー、ボサノバなどのいろいろなエッセンスの詰まったカラフルなアルバムですが、場面に応じて奏法、音色を使い分ける見事なギターをトミーが披露してくれています。やはり才能豊かな素晴らしいギタリストですね。

 
1976年のディープ・パープル解散後は、自らのバンドを率いて2枚目のソロ・アルバム "Private Eyes"(邦題:魔性の目)をリリースしますが、同年わずか25歳にて、麻薬の過剰摂取が原因でこの世を去りました。


素晴らしい才能が正当に評価されない悲運のギタリストに、合掌。