70ー80年代ロック名曲セレクション

ハード、ポップ、プログレ、ファンク、・・・等々、1970ー1980年代の洋楽ロックの名曲を独断と偏見でご紹介。この曲達を聞かずして、ロックを語ること無かれ。

「AOR」ではもはや括れない、超一級のボーカリスト! Bobby Caldwell "Heart Of Mine" (1988)

収録アルバム "Heart Of Mine" 

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 今回ご紹介するのは、アメリカのAORを代表するシンガー、ボビー・コールドウェルの5枚目のアルバム "Heart Of Mine" からタイトル曲の "Heart Of Mine" ですが、他のアルバムからも何曲か合わせてご紹介したいと思います。

 

ボビー・コールドウェルは1951年にニューヨークのマンハッタンで生まれました。

1978年にアルバム "What You Don't Do For Love" でデビューするのですが、ここからシングル・カットしたアルバム・タイトル曲の "What You Don't Do For Love"(邦題:風のシルエット)が全米9位のヒットとなり、AOR界の新星として一躍脚光を浴びました。

 

その後、1980年には2枚目のアルバム "Cat In The Hat"、1982年には3枚目のアルバム "Carry On"、1984年には4枚目のアルバム "August Moon" とリリースを重ねていくのですが、1980年に所属していたレコード会社が倒産してしまったこともあって満足なプロモーション活動ができず、アメリカでの人気、知名度ともに振るわない結果となってしまいました。

 

一方、日本では折からのAORブームに見事にハマり、ボズ・スキャッグス、クリストファー・クロスと肩を並べて、AOR界を牽引する存在となりました。

同じAORとは言え、クリストファー・クロスが夏の海岸を意識した明るいイメージなのに対し、ボズ・スキャッグスはややロック色が強めで都会のネオンきらめく喧騒なイメージがあり、またボビー・コールドウェルはより洗練された音楽性で都会の中でも高層ビルの一室から見下ろす夜景のイメージと、見事に棲み分けがされており、それぞれのファンを魅了しています。

 

1984年の4枚目のアルバム・リリース後は、しばらくは他のミュージシャンへの楽曲提供が中心の活動になり、アルバムのリリースも途絶えてしまうのですが、その間にピーター・セテラに提供した "Next Time" が全米1位になるなど、ソング・ライティングの面で能力を発揮していました。

 

そして1988年、それまでに他のミュージシャンに提供した曲のセルフ・カバーを中心とした5枚目のアルバム "Heart Of Mine" をリリースします。

 

それでは、"Carry On"(3rd)、"August Moon"(4th)、"Heart Of Mine"(5th)の中から何曲かご紹介しましょう。

 

Carry On(3rd)


(邦題:シーサイド・センチメンタル) 

 

 ドラムスにジェフ・ポーカロ、ギターにスティーブ・ルカサー、キーボードにデビッド・ペイチ、スティーブ・ポーカロと、TOTOのメンバーの全面的協力を得て作成された3枚目のアルバム。その他にもバックにはアメリカ西海岸の著名なミュージシャンが名を連ねています。

 しかし、音的には全然TOTOではないですね。これまでのボビー・コールドウェルのサウンドの延長線上にあり、ピアノやシンセサイザーなどのキーボードが実に効果的に独自の世界を演出しています。

 

■ Loving You

おとなしめなレゲエのノリで、ボビーのボーカルも淡々と入ってきますが、徐々に熱を帯びてきて熱唱モードになっていきます。引くところは引き、押すところは押す、ボビーの巧みなメリハリのあるボーカルに耳を奪われます。ホーンが効果的な、印象に残る一曲です。

 

■ Jamaica

レゲエの巨匠ボブ・マーリーに捧げた歌。リズムはレゲエではなく、カリプソ調にすることで、ジャマイカの陽ではなく陰の部分にスポットを当てて、儚く悲しげで寂しげな胸を打たれる曲です。エンディングでのリズムのアクセントをずらしてくるあたりが非常に凝った作りをしていますね。

このアルバムだけでなく、ボビーの楽曲の中で1、2を争う名曲だと思います。

 

August Moon(4th)

 

 

このアルバムも、ドラムスにジェフ・ポーカロ、ベースにデビッド・ハンゲイトといったTOTOのメンバーを始めとした、腕利きのミュージシャンがバックを固めます。

前作よりもロック色が強く、ボビーのアルバムの中では比較的好き嫌いが別れる作品ですが、それでもボビーのボーカルの素晴らしさはどのアルバムにも負けていませんね。

 

■ Sherry

曲の入りこそ今までの路線ですが、サビに入って一転、かなりロックしてます。サビのバックのコード・ワーク、そして間奏のソロ・パートなど、確かに今までのボビーの曲にはないアレンジですね。個人的には、結構好きです。

 

■ Fraulein

ちょっと不思議な雰囲気を持つ曲です。ソウル、ニューウェーブ、ロックなどいろいろな要素がクロスオーバーしてますね。ボビーのボーカルはやや押さえ目なのですが、それでもちゃんと表情がついていて素晴らしいです。

 

Heart Of Mine(5th)

 

 

 これまでの2作と違い、このアルバムはギター、ベース、キーボードの演奏にボビー・コールドウェル本人の名前がクレジットされています。ボーカルだけではなく、楽器もいろいろと弾きこなせてしまうという、多芸多才なんですね!

ギターにマイケル・ランドウの名前がクレジットされているのは、西海岸のミュージシャンが好きな方には嬉しいところです。

 このアルバムは一曲一曲が粒ぞろいで非常に完成度が高く、いつ聴いてもボビーのボーカルがじんわりと心に染み渡る、素晴らしい作品だと思います。

 

■ Heart Of Mine

ボズ・スキャッグスに提供した曲で、ボズのアルバム "Other Roads"(邦題:アザー・ロード)に収録されています。

ボズの甘い声で聴くのがいいか、ボビーがあっさり過ぎるくらいにサラリと歌っているのがいいか、聴き比べてみても面白いですね。

 

■ Next Time (I Fall)

ピーター・セテラがエイミー・グラントとのデュエットで全米1位の大ヒットとなりました。ピーターのソロ・アルバム "Solitude/Solitaire" に "The Next Time I Fall" という曲名で収録されています。

とにかく、楽曲がいいです!そりゃあ、全米1位取っちゃいますよ。

シンプルなメロディ・ライン、女心をくすぐる歌詞、電子ピアノの美しい音色を全面に押し出したアレンジなど、バラードの王道を行く作り込みです。

こちらも、ぜひピーターと聴き比べてみてくださいませ。

 

■ Stay With Me

こちらもやはりピーター・セテラに提供した楽曲です。残念ながら、ピーターのアルバムには収録されていないようですね。

邦画「竹取物語」(1987年公開、主演は沢口靖子)の主題歌になっています。

これも美しいバラードです。サビでの熱唱が心にのこりますね。

 

 AORという大きな括りで見られると、「軟弱」「商業的」「売れ線狙い」といったイメージを抱いてしまうかも知れませんが、ボビー・コールドウェルに限っては、(確かにサウンドとしてはAORと言ってしまうのが一番わかりやすいのですが、)ボーカリストとしての実力は、ソウルフルで繊細で情熱的で心の奥底に響いてくる超一級品だと思います。

もし、敢えて距離を置いている方がいましたら、これを機会にぜひ一度、聴いてみていただけたらと思います。