70ー80年代ロック名曲セレクション

ハード、ポップ、プログレ、ファンク、・・・等々、1970ー1980年代の洋楽ロックの名曲を独断と偏見でご紹介。この曲達を聞かずして、ロックを語ること無かれ。

ファンク・デュオ "The System" のパクリ疑惑! ~ 中山美穂 "Catch Me" (1987)

収録アルバム "CATCH TE NITE"

 

アイドルが歌う打ち込み系ダンス/ファンクの名盤!

 

今回はちょっと趣向を変えて、邦楽の1曲を紹介します。

1987年にリリースされた中山美穂さんの11枚目のシングル、"Catch Me" です。

作詞・作曲・編曲を角松敏生氏が担当しており、中山美穂さんにとっては自身初めてのオリコン週間1位を獲得しました。
翌年にリリースされた、角松敏生氏のフルプロデュースによる中山美穂さん6枚目のアルバム "CATCH THE NITE" にも収録されています。
こちらのアルバムも、オリコン・アルバムチャートで初登場1位を獲得しました。


アルバムのサウンド的には、典型的な当時の流行のダンス・ミュージックで、ビート強めの打ち込み系リズムにシンセ・ベースがドンデンドンデンドンドドデンとシンクロし、シーケンサー・ライクなキーボードがチャカチャカテケテケツィーンときらびやかに宙を舞い、という感じ(どういう感じだ)です。

若干ボーカルが負けちゃっている感は否めませんが、そこは角松敏生氏の腕の見せ所で、彼女の声質を考えて中音域が伸びやかなメロディを持ってきたり、切なげで儚げな曲調を多めにしたりして、アルバムの完成度を高いレベルで保つことに成功しています。

バランス的にも、ビートの強い曲の中にもしっとり聴かせるバラードを織り交ぜて、飽きのこない、聴きごたえのあるアルバムに仕上げています。

シングル "Catch Me" についても一連の作品と同様のテイストですが、曲の合間に入る掛け声が印象に残りますね(これについては、後述)。


ここで注目したいのは、角松敏生氏のサウンド・メイキングのバックボーンです。


角松敏生氏は、1981年にシングル "YOKOHAMA Twilight Time" とアルバム "SEA BREEZE" でデビューしました。
当初は、大瀧詠一山下達郎のブレイクで盛り上がりを見せていた、リゾート感覚を取り入れたシティ・ポップス系の音楽スタイルでしたが、1983年頃からニューヨークへ長期滞在するようになり、次第にダンス・ミュージックやニューヨークのミュージック・シーンを席巻していた最先端のファンク・ミュージックに傾倒していきます。

中でも、当時特に影響を受けたのが(本人も公言していますが)、"THE SYSTEM" という、ボーカル/ギターの黒人ミック・マーフィとキーボードの白人デビッド・フランクから成るR&B系ファンク・ポップ・デュオでした。
彼らのサウンドは、打ち込み系のビートに乗せて、シンセ・ベースとキーボードが絡んでいくというスタイルで、イギリスではエレクトロ・ポップ系の同様の音作りが出始めていましたが、ニューヨークの音楽シーンではまだ珍しく、最先端で斬新なスタイルであり、角松敏生氏もその新しさに惹かれていったのでないかと思います。

"THE SYSTEM" は1987年にアルバム "Don't Disturb This Groove" をリリースしますが、聴き比べてみると、そのサウンド面での影響が、中山美穂さんのアルバム "CATCH THE NITE" に色濃く表れているのがよくわかると思います。

 

"Don't Disturb This Groove"  (THE SYSTEM)

 


中山美穂さんのアルバムに "Just My Lover" という曲がありますが、これは "Don't Disturb This Groove" の "Nighttime Lover" のパクリですね。イントロを聴くと「あれっ?」という感じで、曲の随所に「あれっ?」「あれあれっ?」というポイントが散りばめられています。いやー、角松サン、やりますねー。アウト!(笑)

 

中山美穂さんのアルバムの商業的な成功は、角松敏生氏自身にも非常に大きな影響を及ぼしました。
自身の音楽的ルーツのひとつでもあるフュージョンを基調としたインストルメンタルを手掛け、自らのギター・プレイを収めたアルバム "SEA IS A LADY" を発表したり、所属レコード会社に自らの音楽レーベル「オーン」を立ち上げ、他のアーティストのプロデュース作品を発表したりと、自身の活動の幅を広げていくきっかけになったことは間違いないところでしょう。


中山美穂さんの上記アルバムのリリースと同じ頃、角松敏生氏はお笑い芸人グループ「ジャドーズ」の本気の音楽界進出に一役買い、和製ソウル・ファンク・バンドとしてデビュー・アルバム "IT'S FRIDAY" 、デビュー・シングル "Friday Night" をプロデュースしましたが、世間的には注目されることなく、ほとんど話題になりませんでした。

しかしながら、ジャドーズのメンバーの藤沢秀樹氏が、後にモーニング娘。の大ヒット曲 "LOVEマシーン" のアレンジャー「ダンス☆マン」として、一躍その名を世間に知らしめる事になることを考えると、角松敏生氏の関わりもあながち無駄ではなかったということになりますね。

 

THE JADOES ゴールデン✩ベスト(ジャドーズ)

 


角松敏生氏がプロデュースしたジャドーズの一連の作品は、やはりニューヨークのダンス/ファンク・ミュージックのテイストが色濃く出ており、素直にカッコイイと言えるもので、彼らの本気度が感じられます。
中でも、シングル "HEART BEAT CITY" という曲は特に好きで、今でもよく聞くのですが、先ほどの "THE SYSTEM" のアルバム "Don't Disturb This Groove" には "Heart Beat Of The City" という曲が収録されており、「げっ!これもパクリか!」と思いましたが、曲調はまったく違ってました。ので、セーフ!(笑)


ちなみに、中山美穂さんのシングル "Catch Me" で聞こえる掛け声の主は、ジャドーズだそうです。