70ー80年代ロック名曲セレクション

ハード、ポップ、プログレ、ファンク、・・・等々、1970ー1980年代の洋楽ロックの名曲を独断と偏見でご紹介。この曲達を聞かずして、ロックを語ること無かれ。

The Best Of Times 【STYX】 (1981)

収録アルバム  "Paradise Theater"

 

華やかな時代もいつかは終わりが来る。しかし、思い出は・・・

 

アメリカのハード・プログレッシブ/ポップ・ロック・バンド "STYX" が1981年にリリースした10枚目のアルバム "Paradise Theater" に収録された珠玉のバラード "The Best Of Times" をご紹介します。

スティクスは1972年にデビューし、(メンバー・チェンジを繰り返しながらも)現在もなお活動を続ける、歴史と伝統のあるバンドです。

デビュー当初はコテコテのプログレッシブ・ロックで、大衆受けはしなかったものの、一部のコアなファンの指示を集めていました。
1974年の3rdアルバムあたりからポップ性を徐々に意識し始め、1975年の5thアルバムのリリースの後にバンドに加入したトミー・ショウの影響で、バンドは一気にポップ・ロック路線への方向転換を加速していくことになります。
同時に、大衆からの人気も獲得することとなり、1977年リリースの7枚目のアルバム "Grand Illusion" が初の全米トップ10に入ります。1979年リリースの9枚目のアルバム "Cornerstone" は全米2位の大ヒットとなり、同アルバムからのシングル "Babe" は全米1位を記録することになりました。

そして、押しも押されぬ人気バンドとなった彼らが1981年にリリースしたアルバムが、今回ご紹介の "Paradise Theater"です。
シカゴに実在(1928~1958)した「パラダイス・シアター」という劇場の栄枯盛衰をテーマにしたこのアルバムは、念願の全米1位を獲得し、シングル・カットした "The Best Of Times"(全米3位)、"Too Much Time On My Hands"(全米9位)の2曲も大ヒット、まさにスティクスがアメリカン・ロックの頂点に上り詰めた感のある1枚です。
デビュー当時は無骨で生真面目なプログレッシブ・ロック・バンドだったスティクスが、トミー・ショウという都会風ヤンチャボーイの加入で一気にあか抜けてサウンドもポップになっちゃって、ボーカル、キーボードのデニス・デ・ヤングもすっかり洒落たオジサンになっちゃって、だけどもギタリストのジェームズ・ヤングだけはどうしても泥臭さが抜けなくて、その絶妙なバランスが魅力のバンド、という私の印象です。

今回ご紹介する曲 "The Best Of Times" ですが、ピアノとボーカルでシンプルに始まり、サビでドラム、ベース、ギターとコーラスが被さって盛り上がっていく、とても美しいバラードの名曲です。
デニス・デ・ヤングの艶やかでハリのあるボーカルは力強くもどこかちょっと翳があり、またボコーダを使用した印象的なコーラス・フレーズ、そして間奏のトミー・ショウのギター・ソロも、華やかな中にもガラスのような脆さがあり、曲全体のイメージ、あるいはアルバム全体のテーマ「華やかな時代もいつかは終わりが来る。でも思い出はずっと心の中に残り続ける。」というものを見事に表現していて、感動的ですらあります。

アルバムの収録曲 "Too Much Time On My Hands" もとても好きな曲です。打ち込みサウンド風のミドル・テンポの淡々とした曲なのですが、サビで入るハンド・クラップが印象的です。
忘れることができないのが1982年の初来日ツアー、横浜文化体育館に出掛けていきました。コンサートの中で、この "Too Much Time On My Hands" の演奏が始まり、観客が思い思いのちょっとバラけた手拍子で盛り上がっていたのですが、サビに入った途端に、元曲とまったく同じタイミングで演奏に合わせて手拍子が打ち鳴らされた時は、鳥肌が立ちましたねー。会場全体の一体感の中にこの自分もいることを感じて、とてつもなく幸せな瞬間を味わうことができました。